こんにちは。
実はわたくし、少し長めのお休みをいただいていたのですが、先日、とうとうというかやっとというか、遂に社会復帰を果たしました。
もとが仕事をしていないと落ち着かない性分なもので、自分で望んだ休暇にもかかわらずなんとなくソワソワして、何も届くはずのない会社メールをチェックしてみたりする毎日。
こんなところも小心者を自認する所以でございますが、まぁ、それでも何だかんだリフレッシュさせていただきました。
出社日前日になったらなったで、ちゃんと復帰できんのかいな…と不安に襲われたりもしましたが、万全すぎるシミュレーションのおかげか何とか社会の荒波に食らいついている今日この頃です。
そんな中、さる週末、社会復帰の第1週目がめでたく、どうにか終了いたしました。
てなわけで、記念になんぞおいしいものでも頂こうじゃないかというなにかと理由つけて自分にご褒美モードが発動いたしまして、かねてより目をつけていた代々木公園近くに佇むイタリアンの名店、Ostu(オストゥ )さんに伺いました。
渋谷からほど近いくせに閑静な住宅街である代々木公園駅周辺。それでもやっぱりどことなくおしゃれな雰囲気が好きでよく散歩するのですが、その時に見かけて以来ずっと気になっていたこちら。
今回の訪問を決めてから調べてみると、なんとミシュラン一ツ星の実力店とのこと。
グルメガイドの星の数に踊らされるのも馬鹿馬鹿しく感じつつも、自分の嗅覚と不特定多数の評価が一致すればなんとなく嬉しいのは人間の性ってやつでしょうか。
日本では聞きなれぬオストゥという店名は、ピエモンテ州の言葉でオステリア、すなわち日本語でいうところの食堂を意味する言葉に由来するそうです。
言うだけあって、シェフはピエモンテ州の名店にて修行されたとのことで、いやが応にも期待が高まりますね。
来店2日前に(食べログではない)某サイトを利用して2名分のディナーコースを予約。
月初の土曜日18時という些か読みづらい日時ながら、幸運にもなんとか席を確保できました。
実際に伺ってみると、開店直後にも関わらずテーブル席中心の店内は6割ほどがすでに埋まっておりました。
場所柄なのか、いずれのグループもいかにも裕福そう、かつ年齢層は高め。
私の拙い経験上、こうした客層のお店はえてして良店であることが多いため、ひとまずの安心を得たのでした。
こちらのディナーコースはアンティパスト、プリモピアット、セカンドピアット、デザートをそれぞれメニューから選べるプリフィクススタイル。
豊富なメニューに目移りする中、苦心の末にお願いしたお料理は以下の通り。
- ヴェネト産ウサギ肉のインサラータ 秋トリュフ
- フレッシュポルチーニのセモリナ粉フリット
- 熟成カルナローリ米のベルジェーゼ風リゾット
- タヤリン ヴェネト産サルシッチャのソース
- 国産牛ほほ肉のブラザート アル バローロ
- トルティーノ ディノッチョーラ ザバイオーネジェラート添え
- エスプレッソとミニャルディーズ
一応、ピエモンテ州以外の料理も用意されているのですが、せっかくなのでお店のおすすめに乗っかって、ピエモンテ縛りでキメてみました。
というわけで、まずはこちらもピエモンテのスプマンテ、フランチャコルタドサッジョゼロで乾杯。
食前酒に泡を頂くと、胃がスッキリして食欲が湧いてきます。
コースにおける先付けやアミューズってのは、全体に対する印象を左右するという点で非常に重要な存在だと思うのですが、突き出し的に供されるこちらのグリッシーニとパンは本当に美味しかった。まさに期待を膨らませてくれる、嬉しい存在でした。
フォカッチャはフワフワフカフカで、口に含むと気持ちがいいです。
コースの進行中もパンは度々追加できるんですが、美味しいあまりついつい食べ過ぎて都合4つ行ってしまったのはまた別のお話…。
スプマンテとグリッシーニ、そしてパンに舌鼓を打っている間に、アンティパストが運ばれて参りました。
待ちに待ったコース本番の開始です。
■ヴェネト産ウサギ肉のインサラータ 秋トリュフ
要するにウサギのサラダですが、日本人にも抵抗のない癖がなくさっぱりした味わいは、いわゆるラパン、家うさぎでしょうか。
一般にインサラータというと、安直にもヴィネガー、パルミジャーノ、オリーブオイルの味に支配されちゃうイメージないでしょうか。ありますよね。わたしはあります。
ところが今回頂いたこちらのインサラータ、ドレッシングの主張はむしろ控えめで、ナッツやイチジク、ザクロの穏やかな甘みを上手く利用しつつ、ともすると淡白すぎるウサギの旨味をしっかりと引き出しています。
結果的に、あっさりしているのにコクがある力強い味に仕上がっており、本当に美味しかった。
初っ端から巧みな食材使いを見せつけてくれる、嬉しい一皿でした。
スプマンテが切れたってんで、思い切っておすすめのワインをボトルで頂きました。
グリニョリーノ モンフェッラート デル カサレーゼ(舌噛みそう)なる、ピエモンテはモンフェッラート地方のワイナリーで作られるワインとのこと。
果実味は強くなく、2013年という微ビンテージのおかげか酸味も穏やかなため、食べ物に合わせやすそうな印象。
どことなくスモーキーな風味もするあたり、珍しくも楽しいワインでした。
フレッシュのポルチーニに衣をつけてフリットにした、シンプル極まりない一品。
イタリアでパスタの材料に使われるセモリナ粉からなる衣はきめ細かく、サクサクした軽い口当たりでいくらでも頂けそうです。
ポルチーニに苦手意識を抱く日本人は多い、って以前聞いたことがあるけれど、こちらはフレッシュなので乾物ほどの強烈な癖はなく、むしろキノコ好きな日本人好みの味と感じます。
■タヤリン ヴェネト産サルシッチャのソース
た、タヤリン?なんじゃらほいと思って聞くところによるとピエモンテを代表する手打ちパスタ、とのこと。
名前の響きからして、あのタリオリーニがピエモンテ州で独自に発達したものと予想したとおり、形状は平打ちの細麺です。
パスタの種類ってのは膨大で、知らないものが出て来て当たり前って感じなのですが、このタヤリンの感触はそれでも衝撃でした。
あえて擬態語で表現すると、啜ればチュルチュルフワフワピロピロ、噛めばシャッキリという具合。(大丈夫か)
とにかくアルデンテとかそういう概念とは無縁の、強いて言うならアジアの米で作った麺のようにふんわりしているんですよね。
優しい感触のためか、サルシッチャをつかった塩味の強いソースが合わせられています。
主張の穏やかな麺の美味しさを濃厚なソースが引き出してくれていて、非常に均整のとれた一皿でした。
ただ、あまりに食べやすく一瞬でペロリしてしまったことが唯一惜しかったところ…。
(完全に八つ当たり)
■熟成カルナローリ米のベルジェーゼ風リゾット
二品目には、イタリア原産のカルナローリ米を使った濃厚なリゾットをオーダーしました。
粒が日本のうるち米よりも大きく、感触はモチモチしていてソースがよく絡みます。
ベルジェーゼ、という単語の意味するところは不明ですが、赤玉葱のジャムを使って炊き上げたというこちら、存外にもコッテリしていて濃厚なお味。玉葱に徹底的に火を通したときのあの甘みのおかげで味が単調にならず、奥行きがあるんですよね。
メニューの字面からは想像し難い、意表をつくリゾットでした。
■国産牛ほほ肉のブラザート アル バローロ
メインに相応しい、迫力のある一皿がやって参りました。
またもや日本語でOKって感じの料理名ですが、ブラザートはピエモンテ独自の煮込み料理の名称で、バローロは同産の赤ワインを意味するとのこと。すなわち、言ってしまえば牛ほほ肉の赤ワイン煮込みですね。
繊維の一つ一つがはっきりしている牛ほほ肉がナイフを入れただけでホロホロにほぐれるまでに柔らかく煮込まれております。
バローロのソースもこってり濃厚で、牛肉に合わせるには心強い存在感。
付け合わせはフレンチとは異なり、マッシュポテトではなくポレンタが添えられています。
トウモロコシの粉末を練り上げて作った北イタリアの名物ポレンタは、素朴ながら優しい甘さでむしろマッシュポテトよりもこの類の料理を上手くサポートしてくれる気がします。
■トルティーノ ディ ノッチョーラ ザバイオーネジェラート添え
トルティーノ ディ ノッチョーラって三回言ってみて!って言ったら多分一回は噛む。
そんな名称に惹かれてデザートにはこちらをチョイス。
ノッチョーラってのはヘーゼルナッツを意味するイタリア語とのことで、平たく言えばキャラメルソースとヘーゼルナッツをタルト生地で包んで焼き上げたお菓子です。
ナイフを入れると中身がトロリと溢れ出て、ビジュアル的にも絶対美味いやろコレ感満載。
タルト生地のサクサクした食感との対比がまた楽しく、最後まで飽きずにいただけるデザートでした。
個人的にはイタリア料理を頂いた時のドルチェの印象ってあまり残らないことが多いんですが、そんな中でとても印象的な一皿でした。
■エスプレッソとミニャルディーズ
ミニャルディーズすなわち食後の軽いお菓子は、ポレンタを焼き上げたもの、メレンゲを焼き上げたマカロンのようなお菓子、ヘーゼルナッツのチョコレートの三種類。
控えめな甘さのおかげで、本格的なエスプレッソの苦味がむしろ引き立って、口の中があくまでスッキリしたところで、有終の美と相成りました。
全体的に、本当に素敵なレストランでした。
ピエモンテ州のことなんて全然知らないけれど、なんだか現地のリストランテで食事をしたかのような気分に浸れます。
一皿一皿に手が込んでいて、安直な食材使いをしないところも非常に勉強になるお店でした。
個人的には是非リピートさせていただきたいお店ですね。
シェフによれば、これから秋が深まるにつれて、白トリュフも出てくるとのこと。
料理はリーズナブルな一方でワインは若干強気な価格設定だったりと、ぼくのようなペーペーはターゲットの外にありそうな気がしないでもないけれど、また秋が深まった頃に伺いたいと思います。
それでは、今回も駄文をお読みいただき、
ありがとうございました。
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