食べものが好きだ。

食に興味を全振りした若造サラリーマンによる食ブログ

【食べ歩き】星野リゾート 界川治(川治湯元)

こんにちは。

気づけば2020年も3月に突入し、ラスト更新からなんと三ヶ月近くが経過してしまいました。

何かとバタバタしていて放置気味でしたが、またボチボチ更新していければなーと思います。

 

これだけ間隔が空けばネタも溜まりに溜まって何から書けばいいのか些か戸惑いますが、とりわけ印象的だった掲題のお宿について徒然なるままに感想を書き殴りたいと思います。

なお、今回伺ったのはご存知の通り温泉宿ですので、食べ歩き記録というよりは滞在記になりますこと、あらかじめご了承ください。

(誰に説明しとるんじゃ)

 

というわけで、今回は栃木県の秘境・川治湯元にある、星野リゾート界 川治に伺いました。 

kai-ryokan.jp

界といえば、もはやお馴染みの星野リゾートが手掛ける温泉宿ブランドですよね。

利用に至った経緯としては、以前に妻の誕生日記念旅行で箱根の界を訪れた際、彼女がたいそう感激していたので、結婚後第一回目の誕生日旅行である此度も界パワーにあやかろうと思ってのことでした。

また、界川治の最寄である川治湯元駅は、東武浅草駅や北千住駅など都内の駅から電車一本で約2時間程度で行けるので、都内の人間にとってプチ旅行にはうってつけなところも、川治をセレクトした理由の一つでした。

 

川治湯元駅に到着して階下のロータリーに降りるや、界川治のロゴが書かれたマイクロバスがお出迎えしてくれました。

事前に問い合わせたところによると、予約は不要、なぜなら下り電車の到着時間ごとに送迎を行っているから、なんだとか。なんというホスピタリティ、お疲れ様です…。

 

バスに揺られること5分(近!)、到着した界川治はなんだか昔ながらの温泉宿といった佇まい。

界シリーズは温泉宿を買い上げて星野の世界を作り上げるのが基本スタンスとはいえ、ここまで前身の面影を残しているあたり、ちょっと箱根とは趣が異なるようですね。

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門をくぐったあとの、玄関までのアプローチ。野趣を感じる素朴な造りです。
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里山をコンセプトにしているだけあって、水車小屋が設けられています。

予約すれば中でお茶を飲んだりオリジナルの甘味が楽しめるんだとか。

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エントランスは広々としていて、中から漏れる朱色の灯りがなんとなく星野リゾートらしい。
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館内に入ると、ロビー横のウェイティングスペースに通されます。

随所にひょうたんのモチーフがあしらわれており、郷土色を感じさせてくれます。

それでいてオシャレにまとまっているのはさすがですね。
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併設されている売店には、益子焼の陶器が豊富に取り揃えられていて、器好きは目移り必至。f:id:shmz_foodlover:20200303160157j:image

 

ウェルカムドリンクはほうじ茶でした。

暖冬にあって雪もちらつく中、冷えた体に温かいお茶はうれしい。
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ドリンクを飲み終えてほどなく、20代半ばくらいのスタッフさんがお部屋へ案内してくださいました。

星野リゾートのスタッフさんって、説明がたどたどしかったりするものの、皆さん笑顔にあふれていて、おもてなしの気持ちが感じられてうれしいですよね。

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和モダンでスタイリッシュな空間ながら、お部屋奥には掘り炬燵もあり、日本人には心から寛げるうれしい造り。

ベッドではなく板間にマットレスを敷いた寝床も、酔っ払って転げ落ちる心配がなくて有難いですね。転げ落ちると痛いもんね。

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荷物をお部屋においてひと段落したところで、まだまだ夕食まで時間があるぞってことで、館内を散策することに。

さしあたって今回は、界シリーズの名物、ご当地楽を体験してみました。

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ご当地楽とは、各地域の風習や文化を楽しみながら学べる星野リゾートならではのアクティビティとのこと。(以下、公式サイトより)

 

全国に展開している温泉旅館ブランド「星野リゾート 界」では、それぞれの地域の特長的な文化を楽しんでいただけるよう、界オリジナルの特別なおもてなし「ご当地楽」を用意しております。 

 

とりわけ、ここ界川治では、農家で使用してきた石臼を使って大豆を挽くことで、オリジナルの黄な粉を作れるというもの。

初めに聞いた際は「なんじゃそりゃ…」といぶかしく感じたものの、思えば石臼なんざ使った記憶ないな、ということでレッツトライ。

 

独自のブレンドで大豆を選んで、上述の石臼にセッティング。ガイドラインに従ってゴリゴリ石臼を挽いてみると…

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ヤバい粉(黄な粉)が出来上がりました。

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挽いて終わりではないのが星野リゾートの面白いところで、オリジナルのヤバい粉(黄な粉)はセルフサービスのわらび餅にかけていただくことができます。なんだか一味違うのは自家製ゆえの愛着のせいでしょうか。
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最初はバカにしていても、やってみれば意外とハマってしまうのがタノシイ。

ほかのお客さんを見るに同じ気持ちだったようで、和気あいあいとご当地楽を楽しんでいる様子でした。

界川治では他にご当地楽として紙漉き体験もあるようですが、先着順レースにあえなく敗退したため泣く泣く断念。まあ昔やったことあるから別にいいんだけどさ。

 

そうこうしているうちに、夕食まで1時間を切りました。 

当方には温泉宿での夕食は湯上りのビールから、という矜持があるため、慌ててお風呂に向かいます。

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地下(EV表記上は1F)の大浴場エントランスを抜けると、縄のれんの向こうに開放的な湯上りリラックスゾーンが設けられています。

窓際のスペースは瞑想用とのことで、何人かのお客さんが精神を鎮めていらっしゃいました。瞑想の効能をしたためた張り紙もあるものの、なんだか僕には考えの及ばない、よくわからん先進的な世界ですな…。いつか挑戦してみよう。
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以前箱根を利用した際に感激した無料アイスキャンディーサービスは、ここ川治でも健在でありました。

夕食前だったので控えましたが、個人的には星野のホスピタリティの象徴にすら感じます。(ホントかよ)
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男子風呂、女子風呂いずれも構成は同じで、露天風呂2種類、内風呂1種類、それにサウナといったラインナップのようです。「傷は川治、火傷は滝(鬼怒川)」と言い伝えられている通り、心の傷がみるみる癒されていく泉質は、名湯の面目躍如といったところでしょうか。(我ながら意味不明)

 

湯上りビールの準備が整ったところで、満を持して夕食会場へ向かいます。
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本日の献立はこちら。
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あいかわらず盛沢山ですね。

会席料理のお品書きって、あしらいレベルまで書き出すから若干のかさ増し感が漂ったりするけど、それを差し引いても盛沢山です。蓋物なんざ巷でなかなか目にしないもんな。

 

ということで期待に胸膨らませつつ、まずは矜恃に従いビールで乾杯。生の銘柄はハートランド一本でした。スタイリッシュなイメージに合わせているのかな。
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■先付け: あわもち

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練った赤味噌を、あわもちにちょこんと添えた里山らしい一品。あわの素朴な甘みを味噌の渋みが引き締めて気の利いた先付けです。

 

■煮物: 南瓜のすり流し 大根餅 棒蟹 絹さや
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出汁で伸ばした南瓜は甘すぎず、昆布の旨味も感じられて胃に染み入ります。

大根餅のざっくりもちもちした独特の食感は心地よく、食欲がそそられる前菜ですね。

 

次に運ばれてきたのは、造りと八寸が盛り込まれた華やかなお膳。各地の名産をモチーフとした八寸は目にも楽しく、界ブランドの名物といえるでしょう。

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■造り: 鱒、ローストビーフ、湯波

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造りは秘境・川治ならではの山の幸。まろやかな湯波、やわらかなローストビーフ、こってりした鱒。単純だが安定のラインナップでした。

 

■八寸: 鯛棒寿司、蟹と菊花の砧巻き、鴨燻製と林檎、フォアグラ干し柿、松笠慈、はしばみの白和え、ナマコポン酢

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山海の味覚をバランスよく楽しめるように、との気遣いが感じられる華やかな盛り合わせ。少々食事の運びが駆け足だったこともあり不完全燃焼な感はあれど、各品に手間が掛かっており、目にも舌にも楽しめるお皿だったと思います。

ただ、鴨に合わせた林檎の印象が強過ぎたりと、モダンジャパニーズを意識する余り甘味と塩味の取り合わせに躍起になってる感が少々気になったかな。

 

酒の肴然とした料理が続き、たまらず日本酒にチェンジ。郷土色を大切にする界川治には、栃木の地酒も取り揃えております。

酒のことになると一気に優柔不断に陥る当方は飲み比べセットをチョイス。性格の異なるお酒がいっぺんに楽しめて飲兵衛にはうれしい限り。

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■揚物: フォアグラ東寺揚げ、野菜の天婦羅

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東寺揚げとは、具材を湯波で巻いて油で揚げた料理のこと。癖のあるフォアグラが油分と出会うと大人しくなり、不思議と湯波と調和しておいしい。

 

■蓋物: 穴子と湯波の炊き合わせ

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メインディッシュに移る前に、蓋物として炊き合わせが供されます。いわゆる巻繊焼きのように、具材を卵でまとめた生地と穴子を合わせてあり、淡白ながら複雑な味わいで楽しめました。

ここで、バタバタと台の物の準備が始まり、なんとなく食べるのを急かされる空気が流れ始めて落ち着かなかったのは残念なポイントではありました。

 

■台の物: 猪と和牛の味噌仕立て鍋

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お次は、猪肉と和牛のお鍋を甘辛味噌仕立でいただきます。なお、詳細は公式サイトを参照されたしですが、当メニューは専用プラン予約必須ということで今回のメインイベントといえましょう。
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まさしく牡丹のような美しい佇まいの猪肉と牛肉。鮮やかな見た目のせいか、そこそこ満腹にも関わらず食欲が湧いてくるのが危険。

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完全セルフサービスという星野リゾートらしからぬ放置プレイに面食らったものの、これはこれで鍋奉行の血が騒ごうというもの。
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甘めの味噌床は香り豊かで、焦げた風味も相まって肉の味を引き立てます。

さあ食うぞーと意気込んでいるところにお給仕さんが土鍋で炊かれた白飯を運んでいらっしゃいました。
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なんでも、飯に合う味付けで仕立てているため、ぜひご飯と一緒にお召し上がりください、とのこと。

そうまで言われては、米食民族の誇りにかけてお米を頂かないわけには参りませんってなわけですかさず食べごろの牛肉をオンザライス。

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味噌仕立ての霜降り肉と炊き立てご飯を合わせてまずかろうはずもなくひとしきり悶絶。

 

お次は山間部ならではのジビエの華、猪肉に取り掛かります。猪の醍醐味はなんといっても分厚く携えたその脂身。
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白く染まったら火が通った合図。元祖でぶやよろしく、こちらもすかさずオンザライス。

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噛み締めると脂がジュッと染み出して、土鍋ごはんの甘味と合わさって、山岡士郎風に言うと日本人なら誰でも好きな味だよ!(妻は数枚つまんで打ち止めだったのは内緒)

 

当然若干の癖はあれど、それがまた好きな人間としては野趣が感じられて楽しめました。牛肉と食べ比べるので猪の旨味を認識しやすく、ジビエを食べつけていない人には里山の醍醐味を味わえる趣向だと思います。

余談ですが確実に一合以上はあった土鍋ごはんを気付いたら食べ尽くしていてビビった。

 

■甘味: 苺と花豆のミルクムース

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甘納豆が添えられたミルクムース。非常にオーソドックスながらもはや超絶満腹なことを考えればむしろこれくらいがちょうどよく、かえって身に染みますね。妻分にはご厚意で誕生日記念メッセージを入れていただいたのですが写真を撮り忘れました。

 

ここまで頂けば、献立盛り沢山なことに加え、先ほどの土鍋ごはん食べすぎ問題もあり、限界にお腹いっぱい。食べるのに夢中でお酒を思うほど頂けなかったことを心残りに感じつつ、あえなく打ち止めと相成りました。

部屋に戻れば、酔いと満腹からの睡魔に抗えるはずもなく、意識を失うとともに夜は更けていきました。

 

明くる朝、炬燵に目をやると、妻が空けたとおぼしきハートランドの空き瓶が並んでいるのをみるや、部屋付冷蔵庫のハートランドは1本420円で頂けることを思い出し落ち込んでいると、f:id:shmz_foodlover:20200303155758j:image

まだ酒が残ってんなーということで、かねて気になっていた足湯に行ってみることに。

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これまで、足湯ってなんとなーく衛生面が気になって敬遠していたものの、綺麗なお湯と渓流沿いならではの開放感のおかげでしっかり楽しめました。

 

そうこうしているうちに、朝ごはんの時間がやって参りました。

献立を見るや、夕食に引き続き盛り沢山で、昨晩あれだけ食べたのに思わず空腹が刺激される。

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献立には川治に伝わる郷土料理がふんだんに盛り込まれていて、それにまつわる昔話を楽しみながらお膳が運ばれてくるのを待ちます。f:id:shmz_foodlover:20200303155948j:image
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そしてやってきたのがこちら。

和食党にはたまらんビジュアルをしてはります。
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ご飯はもちろんおかわり自由とのこと。気をつけようね。(自戒)

 

■鬼子蔵汁
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その昔、病気の妻を救うために鬼子蔵さんが阿弥陀様の助言を得て作ったと言う具沢山な汁料理。お餅も入っていたりして豪華なお雑煮といった感じ。疲れた胃にも受け付けやすく、なるほど元気出そうだわ。

 

■とばっちり
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こちらも川治に伝わる郷土料理。日本昔話っぽく洒落の聞いた名前の由来が面白いだけでなく甘辛いかんぴょうと温泉卵が絡んでとても美味しいです。家でも作りたい。

 

■豚の角煮、味付わらび
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しっかり食べ出のある豚の角煮の存在感。ほろほろに柔らかくて甘辛めの味付けで、ご飯が進みます。

 

■鮭の塩焼き、唐辛子味噌
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朝の定番、塩鮭は安定の美味しさです。山あいにしては塩分が控えめで、飲み明かした朝には優しい味わいが有難い。

 

■鶏と豆腐のつくね、野菜の炊き合わせ
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こちらも淡めの優しい味付けがむしろ際立つ一品。素朴さが強調されるラインナップの中にあって、カワイイ梅人参が目にうれしいです。

 

地方の特色を上手に盛り込んでくれるのは本当に有難いです。もちろん、なんの変哲もない温泉宿の朝ごはんもそれはそれで良いのだけど、やっぱり観光客のツボを押さえてくるのはさすがですよね。夕食に引き続き、しっかり楽しめました。

 

というわけで、朝食も大変美味しくいただき、チェックアウトまでの時間を潰すのに利用したのがこちらのスペース。

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ハーブティーやコーヒーが無料で頂けるうえ、旅や地元風俗にまつわる本が用意されていて、ちょっとしたカフェ仕様。

 

渓流を見ながらコーヒータイムなんて、余計に帰りたくなさが募りますが、旅情の余韻を楽しむにはうってつけな大人の空間でした。
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そうこうしているうちにチェックアウトの時間がやって参りました。本当はもっと後ろ倒しにしたかったけど、予定が詰まっていたこともあり、後ろ髪引かれつつも同宿を後にしたのでした。

 

旅行ブログよろしく、なんだか長々と記載してしまいましたが、星野リゾートってさすがだなあと改めて感じた滞在でした。

社員の若さ故か、覚束ない点もたくさんあるが、それを補って余りあるツボの抑え具合というのか、なんとなーく許せてしまう不思議な強さを感じるんですよね。

 

界川治を訪れることは当分ないかもしれませんが、また星野リゾートを利用する時が楽しみに感じさせてくれる、そんな1泊2日でした。

 

妻も喜んでくれたようで、おかげでよい誕生日旅行となりました。素敵な時間を過ごさせていただき、どうもありがとうございました。

 

続く

 

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