こんにちは。
本日は外食日記というか、旅行記もしくは宿レビューに近いのであらかじめご了承ください。
先日の伊豆旅行の逗留先がとっても好みだったので、せっかくブログも始めたことだし、記録に残しておこうと思います。
別に、インスタ映えもしないし派手さもない普通の宿なんだけど、なんだか「コレコレ、コレですよ」って言わずにいられないお店、ありますよね。え、ない?いや、ありますよね。
今回のお宿はまさしくそれでした。
何にでも、丁度良さというものはあって、そしてそれは本当に、人によってもシチュエーションによっても異なるから難しいんですけどね。
あなたにとって大切なものと、私にとって大切なものとは違う。それぞれ違うということ。その違いをわれわれはお互いに受け入れていくことが大切だと思う-本庶佑
旅行は、好きです。
まあ財布事情からもっぱら国内、それも東京近郊にたまに行くくらいですが。
精神的につらいときとか落ち込んでいるときとか、知らない街をブラブラするだけでも大分持ち直せるような気すらします。
それも、ちょっと寂れた温泉地なんかだとベスト。過去の栄華を匂わせつつ、必死に時間の流れに抗っている様子に元気付けられる。
例によって、最近はわりと気持ちが落ちることが多かったので、そろそろ旅行に行きたいなーということで、急遽、西伊豆は雲見温泉に行くことを決めたのでした。
※雲見温泉というのに別に深い意味はなくて、地図を眺めてたらそういや行った記憶ないなーと思って適当に決めました。両親によると赤ちゃんの頃に連れていかれたらしいけど。しらんがな。
現地の人に聞いて知ったんですが、どうやらこちらはダイビングの名所みたいですね。
それだけに街中にはダイビングセンターなる建物が至る所にあって、トップシーズンはとても賑わうんだとか。
幸いにも、我々が伺った9月半ばは暑さも和らいでいて、海目当ての観光客はほとんどおらず、海辺特有の寂れた雰囲気を称えてくれておりました。
海辺って潮風のせいか建物が傷みやすくて、それが場末感を醸し出すような気がします。
寂れているとはいえ(何回言うねん)、そこは温泉地なので宿は星の数ほど点在しているのですが、中でも食事の評判が高い今回の民宿、富久三苑に伺うことに。
往々にして民宿のレビューってのは好評不評入り混じっていて、一概に信用すべきではないとは思いつつ、こちらの宿はこと食事に関しては確認する限りマイナスレビューはゼロ。
これは期待できますねえと楽しみにしながら、チェックインを済ませたのでした。
迎えてくれたのは、いかにも肝っ玉母ちゃんという感じの女将さん。
愛想は別にないんだけど、テキパキしていてお疲れさんと労いの言葉もかけてくれたりして、なんだかオカアさんと呼びたくなっちゃう雰囲気です。
他のスタッフとしては、ご主人とそのお父上と思しき男性2名、お母様と思しき女性が1名。
定かではないですが、どうやら家族経営のよう。
部屋は全部で6〜7つで(うろ覚えです)、民宿なだけあってすべて和室なところにどこか郷愁を覚えます。今風に言うと、エモい。
9月とはいえ三連休の中日というのもあって満室なようでした。
チェックインは16時、夕食が18時ということで少し時間もあったのでお風呂も頂いたりして、
古めかしいけれど掃除の行き届いた岩風呂
お楽しみの夕食と相成りました。
結論から申しますと、めちゃくちゃ量多いです。
食べても食べても次が出てくるので、楽しみ半分、不安半分といった具合。
田舎の親戚の家に行った時のような、むきだしの親切というか、無防備な親切が身にしみます。
そんな富久三苑さんで頂いた夕食が以下の通り。
なお、民宿だから…というわけではないでしょうが、お料理の説明はほとんどありません。
なので料理名は推測というか適当です。悪しからず…。
- 小肌、刺身こんにゃく、きゅうりのヌタ
- 枝豆豆腐
- 地アジ、マグロ、イカの刺身盛
- キンメ、しめじ、里芋の煮物
- 海老、スナップエンドウ、サーモンの冷製 胡麻ダレ
- 土瓶蒸し
- 真魚鰹の幽庵焼き
- 鮑の踊り焼き
- 四角豆、かぼちゃ、舞茸の天ぷら
- ご飯
- アオサの味噌汁
数、すごくない?
一つ一つちゃんと美味しくて、かつ意外なことに盛り付けが洒落ています。
聞くとご主人は板前出身で、料亭の心得もあるんだとか。
言われてみれば、どの器もカワイイし、目にも楽しいのが嬉しいですね。
■小肌、刺身こんにゃく、きゅうりのヌタ
突き出し的に最初に頂いたこれらのお料理ですが、これといった特徴はないけれど、それが逆に嬉しい。
普段着の贅沢、という感じで落ち着きますね。
■枝豆豆腐
これも突き出し同様、なんの変哲もないんだけれど、卓を賑わせてくれる嬉しい存在でした。
■地アジ、マグロ、イカの刺身盛
海辺の面目躍如といった具合の新鮮なお刺身盛り合わせです。
マグロ、イカももちろん美味しいんだけども、ビジュアル的にも圧倒的な印象を残すアジの鮮度が尋常じゃない。
贅沢にも半身を半分にカットしてあるので、口いっぱいにプリプリと歯ごたえ抜群のアジを頬張れます。
古いアジにありがちな嫌な臭いは全くなく、美味しいお刺身でした。
これはビールなぞ飲んでいる場合ではないと、伊豆の地酒・あらばしりにチェンジ。
すっきりしていて、新鮮な刺身と合わせてより清涼感を味わえます。
■キンメ、しめじ、里芋の煮物
※たぶんシメジじゃないです。
綺麗に六方に剥かれた里芋と、贅沢にもキンメを一緒に煮てあります。
里芋は柔らかく炊けていて、味が芯までよく染みていて美味しいです。
料理屋さんの煮物とは違う、若干濃いめのこってりした味付けは民宿ならでは。
とはいえ面取りが六方剥きであるあたり、ご主人のこだわりが感じられます。
■土瓶蒸し
さすがに松茸を使うわけにもいかないのか、代わりにエリンギが使われています。
それでも十分すぎるほどのアサリや昆布、カシワの旨味が合わさって、とっても美味しいお汁になっておりました。
中の具をつついて食べるライブ感も土瓶蒸しならではのお楽しみですよね。
きっちり演出にもこだわってくるところに営業努力を感じずにいられません。
■真魚鰹の幽庵焼き
高級魚が出てまいりました。
箸を入れたときの当たりはしっとり、口に運ぶとホロホロに柔らかい、大型の白身魚ならではのあの食感。
脂と地の味が合わさってコッテリした味わいで食べごたえがあるところもたまりません。
そろそろお腹いっぱいかな…と感じ始めたところだったのに、ついつい美味しくいただいちゃいました。
■鮑の踊り焼き
そうこうしているうちに、鮑が焼けてまいりました。
今回は某じゃらんの特別プラン、「アワビ踊り焼き付いちゃって この値段でいいの?貸切風呂無料」をお願いしていたのもあり、いわば本日の目玉とも言えるでしょう。
値段も手頃ってんで、どうせ大した鮑じゃないんでしょう?と思いきやサニアラズ。
ご覧の通り、かなり立派な風貌をされております。
地元の漁港直売所にもたくさん鮑が並んでいたので、地のものが安く手に入るのかな?
焼き上がりにバターを落として、溶けたところを頂きます。
こんなんもう最高やん…。
生の鮑も美味しいけれど、火を通すと柔らかくなって、かつ旨味もグンと増してきます。
磯の香りとバターのコクが合わさって、シンプルに美味しい。肝のさわやかな苦味も嬉しいですよね。
この値段で、いいの…!?
■四角豆、かぼちゃ、舞茸の天ぷら
沖縄ではうりずん豆、タイではトゥアプーなどと様々な呼称が存在することからもわかるように、アジアの広い地域で愛される四角豆を、伊豆では天ぷらで頂きます。
パリパリシャクシャクした食感は、スナップエンドウのパキッとしたそれとも違って楽しい。
食事も後半ということもあり、天ぷらが運ばれてきた瞬間はなかなか焦りましたが、野菜づくしなので救われた心地。美味しくいただきました。
当然これだけ食べれば、満腹も良いところですが、存外にもペロリと食べられちゃうのが旅行の不思議なところ。
そんな中、おばちゃんがやってきて朝食の時間をどうするか尋ねられます。
こんなに腹一杯なときに朝食のことなんぞ考えられるかいな…
とは思いつつ、7:30と8:00の2ロットのうち、少しでも遅い時間を、という無駄な抵抗で8:00をチョイス。
果たして食べられるのかしら?という不安を感じながら、民宿ゆえのセルフサービスの配膳や布団の準備で気休め程度の腹ごなしをして、軽く寝酒なんかしたりして夜は更けていったのでありました。
あくる朝、起床はお爺ちゃんモードが発動してなんと6:00。
なんとなく田舎の朝は早くあるべきという固定観念があるせいか自然に目が覚めちゃうのもまた旅情ってやつですね。
何しろ初日は長時間の運転の疲れもあって宿直行だったので、せっかくなので周辺を散歩してみました。
ちなみに、麻布十番など都心からは首都高、新東名を乗り継いで、3時間程度(※)かかりますので、お越しの際は参考にしてください。
※三連休中日
天気にも恵まれて絶好の散策日和。
駿河湾に流れ込む小川沿いに、民宿や船宿が立ち並んでいます。
建物は潮風でいい具合に傷んでいてノスタルジック。
売店の店先にはガチャガチャが並んでおり、ラインナップがまたなかなか個性的。
こ、こげぱん!?
ぽ、ぽちゃっこ!?
若者が少ないってのもあるかもしれないですが、どうにもながれる空気が平成初頭ですね。
宿から海まで徒歩5分の好立地です。
先日の台風のせいか、なんとなく色がくすんでいて寂寥感が漂う海に、なぜか心が躍る。
大丈夫かわたしのメンタル。
某宿の前には、もうちょいどうにかならなかったのかしら…というモニュメントを発見。
いや、何かはわかるんだけど…もーちょい、こう…。
あらゆる名所?迷所?を横目に散歩から戻って、しばしゆっくりしようかと思ったけれど、時間もあるしせっかくなので露天風呂にも入ってみることに。
温泉ではないみたいだけど、眼下には川も流れて景色も良いし、なにより清潔だし、入る価値ありですよ。
ちなみに、お風呂は全て共用で、グループ毎に交代で貸切利用する民宿スタイルです。
かえってゆったり楽しめるし、これはこれで素敵。
そんなこんなで気付けば時刻は8:00。すなわち朝ごはんの時間です。
うええ…しんど…
と思いきや、散歩か朝風呂のせいか、昨日あれだけ食べたのになんとなくお腹が空いていることに驚きます。
我々の食い意地が異常なのか、旅情がそうさせるのかは不明ですが、幸か不幸かコンディションは整いました。
朝食は一階の大広間でいただきます。
おばちゃんに案内されて席に着くとすでに、以下の通り食事の準備が完了していました。
- アジの開き
- しらすおろし
- 焼き海苔
- ひじき煮
- 温泉卵
- マグロと叩きオクラ
- 冷奴
- 漬物
- おひついっぱいのご飯
- 地ワカメの味噌汁
これこれ、これですよ…!
©️井之頭五郎
まさしく理想の朝ごはん。
多くの日本人が思い描くあの味。
したがって細かく言及はしませんが、心から安らげるお味でした。
なお、恒例の洒落っ気も忘れておらず、味噌汁は鉄鍋で供されます。
夕食の時も感じたけれど、気取らない割に細かなところまで気が使ってあるお料理ばかりなのは、こちらのお宿の食事で素敵なところですね。
相変わらずグループに一つ割り当てられるおひつのご飯が余っていることに後ろ髪を引かれながらも、なんとか完食。
※おひつ、嬉しいものの100パー完食不可能だからやめてほしいけど、そんなこと言えないわな…。
遅い方の朝食の時間を選択したうえに、ついつい長居もしてしまったりして、割と良い時間になっていることに気づきます。
大広間に残っているのも、もはや我々のグループのみ。
ご年配が多かったせいか、ほとんどのグループがすでにチェックアウトを済ませたようでした。なんで人って、年取ると行動早くなるんですかね。
とはいいつつ我々も、チェックアウトの10:00まで時間もない、ということで、部屋に戻りがてら支払いを済ませ、身支度の上、帰路についたのでした。
総じて、とてもいいお宿でした。
しかも費用対効果が尋常じゃない。
上述した通りの食事の内容で、各種飲み物をたらふく頂いたにも関わらず、一人当たり10500円。
プラン名にも「この値段でいいの?」とありますが、実際に支払ってみると本当に
「この値段でいいの?」てな印象でした。
洗面台もトイレも共用だったり、洋式トイレに至っては宿全体で一つしかなかったり、配膳や布団の準備は半セルフサービスだったり、建物自体が古かったりと、民宿であるが故の制約はちょいちょいあるものの、個人的にはとても居心地のよい、素敵なお宿でした。
西伊豆という都民にとっても手頃な観光地ということもあり、今度伊豆に来た際にも、ぜひ伺いたいですね。
雲見温泉というのはダイビングとかに興味のない人にはそこまでメジャーではないかもしれないけれど、西伊豆にお越しの際はぜひ行ってみてくださいね。
特に旅行にノスタルジーを求めるお方には強くオススメいたします。いるんかそんな人。
それでは、今回も駄文をお読みいただき、
ありがとうございました。
続く
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